Feb 26, 2005
五月挽歌(1997.5.13)
骨壺の包みは
マニエリスム好みのNさんの書棚には
合っていなかった
線香はしゃれた官能的な香ではなく
親しい匂いで
その煙の形は
美術書の背にマッチしている
つげ義春の漫画で
死体の周りで饗宴し
ついにはふざけて死体を持ち上げたりする
というのがあったが
いたずらに
死を何かの色に染めるより
彼の「ゆいごん」のように
何もやらないのもいい
というようなことを連想しても
いいものかどうか
死者に気兼ねするのだが
死者もふだんの僕を
僕と同じ距離だけわかっていなかったろうから
仕方ない
僕が知るのはそれだけだ
Nさんはどんな人であるのか
窓は開け放たれていた
窓の向こうにやはり街路はつづく
遺品のジーンズをもらった
僕はあなたの言葉と
あなたの愛した女性に会いに
この部屋に来た
そのように街路がつづいていたのだ
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