Feb 26, 2005
トラフィック・インフォメーション(1997.4.29)
車窓からシャッターを押し続ける
地平線にでこぼこになった建物を
撮るために
合間にコーヒーの紙コップも
煙草の箱も撮った
隣には老人が座っている
まっとうな人が老いて
まっとうな老人ができた
みんなよけいなことは考えない
だから
快楽について均した肉体で
弁当などを食べている
では
記憶のない人は
超え出ているのか
などと現象学の本みたいなことを
つまりよけいなことを考える
コーヒーにやたらに砂糖を入れるのは
老人も妻もFさんも同じだが
Fさんの場合コーヒーが溢れんばかりに入れるから
これは一考に値するだろう
老人の砂糖の量は多少アベレージより多い程度だ
車窓からの地平線を
もう90枚も写したのは
合目的的だが
後ろの人は不思議そうに煙草をくゆらせていた
たくさん地平線の写真を撮る男と
老人
電光掲示板に
トラフィック・インフォメーションが
流れていく
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